鹿児島県教育委員会賞
じいちゃんのにおい   田浦 瑠華
 今日も服から牛のにおいがする。
 私がじいちゃんの職業である畜産業に興味をもち始めたのは
3年生の夏からであった。
 私には妹が2人いる。2つ下と、4つ下の妹だ。私たち3姉
妹はお母さんの実家である宮崎県日南市に夏休みになってから
何回も行った。親は仕事のため、私が妹たちの面倒を見て、汽
車で日南に向かった。
 駅につくとばあちゃんが待っていた。
「じいちゃんは」
「牛小屋に行ってるよ」
じいちゃんの帰りはいつも5時半過ぎになるため、帰るとお風
呂に入ってソファで髪の毛をふくのがじいちゃんの日課だ。そ
の日もそれを見て私は笑った。
 その日の夜、みんなで牛の話をした。赤ちゃんが産まれたこと、出荷があったことを話した。するとじいちゃんが、
「明日、一緒に牛小屋に来てみるか」
と聞いてきた。妹たちは喜びをみせたが、私は嫌だった。なぜ
なら、仕事終わりのじいちゃんの服はとてもくさいからだ。で
も妹たちが楽しそうにしていると、つい「楽しみだね」と言っ
てしまった。
 朝早く妹たちを起こし、まだ外が暗い中出発した。途中でば
あちゃんがにぎってくれたおにぎりを食べながら行った。
 牛小屋につくと、牛の元気な声が聞こえてきた。予想通り、
牛のにおいはすごかった。その日は牛たちの部屋の掃除をした。私は、トラックが取れなかった細かい所の掃除をした。その後
じいちゃんはエサやりをしていた。じいちゃんは、いつもこん
なに大変なことをしているのかと思うと、あの服のにおいはじ
いちゃんのにおいなのではないかと思った。
 私は今も牛小屋へ行くことがある。
 今日もじいちゃんの仕事帰りの服からは、牛のにおいがする。